抄録
スコープ・マネジメントとは, PMIが発行している「A Guide to the Project Management Body of Knowledge」(通称PMBOK)で定義している9つのプロジェクト・マネジメント知識エリアの一つである. 当論文では, プロジェクト・マネジャーにとってスコープ・マネジメントがすべての基本であること, さらにこのスコープの定義がプロジェクトのオーナー(あるいは発注者)と実施者(あるいは受注者)間で締結する契約の要件となることを明らかにしたい. また, 実務的な観点で契約行為自体にスコープ・マネジメントを適切に適用することによって, 契約当事者双方にとってリスクの少ない契約にできることを明らかにする. さらに, プロジェクトとスコープの関係を明確にしたうえでリスク・マネジメントの観点からスコープの定義が契約上のリスクの重要なファクターとなることを示し, プロジェクトの最終成果物を所定の納期, 品質で納入するために必要なプロジェクト・スコープの記述(いわゆるWBS)と契約書に記載する作業内容, 範囲, 役割分担(いわゆるSOW)との関係を明確にした.