抄録
近年のソフトウェア開発プロジェクトは,インターネットの普及による情報インフラの急速な整備に伴い,クライアント/サーバ・システム開発,Webアプリケーション開発などの比較的小規模のプロジェクトが増加傾向にある.このような小規模プロジェクトでは,低コスト,短納期という強い制約条件下で,いかに高品質を達成するかが求められている.そして,高い顧客満足を実現するため,開発ベンダは,プロジェクト計画段階に割当てられた時間の大部分を,顧客要求の獲得または具体化に費やしているのが現状となっている.そのため,リスク対応計画に十分な時間を割当てることができていない.本論文では,Capers Jonesが示したソフトウェア開発プロジェクトに代表的な60のリスク項目を分析することによって,特定のリスク・イベントの具体化が,他のリスクにどのように伝播して,プロジェクトの状況を変化させ,最終的なプロジェクトの崩壊を招くのかといった構造を明らかにする.これにより,リスク伝播の経過を辿ることを可能にし,リスク対応計画を容易かつ精度よく実施する方法を提供する,