抄録
情報システムの保守運用において,トラブル発生を完全に抑制することは困難を極める.プログラム開発者や保守運用者は,トラブル発生時の原因を修正し,反省事項をフィードバックする改善活動をしているが,ミスやトラブルをゼロにすることができず,後処理や顧客説明に多大な苦労をしている.一方,電力業界,建設現場,交通機関,医療施設等では,ミスが発生すると,人命を奪う重大事故につながることが多いため,精度の高い作業手順を作成する等の予防的対策を実施することと,もしトラブルが発生した場合でも事後に再発防止の対策をしっかり講じる営みが発達している.後者においての一つの手法として,時系列で作業手順を分析してトラブル原因を追究する手法(「時系列化思考フレームワーク」と呼ぶ)が用いられている.そこで,筆者の所属する運用部門では,自らが管理する情報システムの保守運用工程において,前記他業界の優れている手法を取り入れようと考えた.本稿では,時系列化思考フレームワークを,情報システムの保守運用におけるトラブル再発防止策の検討に適用した事例を紹介する.