抄録
電子デバイス用砒化ガリウム(GaAs)半導体の表面状態に関し、硬X線光電子分光(HAXPES)による分析を行った。特に、GaAs表面の酸化物がGaAs電子準位のエネルギーに与える影響について調べるため、酸化物量が異なると予想される2つの試料を作製し、Ga2p3/2及びAs2p3/2の光電子スペクトルを2水準の取り出し角で測定した。結果として、より多くの表面酸化物が確認された方の試料で、Ga及びAsのいずれのピークも低エネルギー側に0.2 eVシフトすることが確認された。このシフトは界面近傍に固定された負電荷の存在を示唆しており、GaAs表面酸化物が電子トラップの起源と推定される。また、酸化物の適切な制御により、耐圧特性に優れたGaAs高電子移動度トランジスタを実現できるものと期待される。