2017 年 17 巻 2 号 p. 55-62
高分子ヒドロゲル微粒子は温度やpHなどの外部刺激に対して応答し,その物理化学的性質が可逆的に変化する『刺激応答性』を有する。また,水溶液中で膨潤し,ブラウン運動をしており,分散/凝集といったコロイド的性質も併せ持つ。筆者らは,これまで「高分子ゲル微粒子の次元制御とマイクロ空間場における機能制御」というコンセプトのもと研究を続けており,その中には,非平衡系の中での自己組織化を活用した機能制御を含んでいる。特に,温度応答性の高分子であるpoly(N-isopropyl acrylamide)(pNIPAm)から成るゲル微粒子は,その希薄分散液の乾燥後,間隔を空けて配列し,単層の薄膜が自発的に形成される。筆者らはこの現象に注目し,その乾燥過程を追跡する事で,ゲル微粒子の自発的な構造形成過程を明らかにしてきた。更に,『液滴の乾燥』といった極めてシンプルな系とは異なり,このpNIPAmゲル微粒子と化学振動反応(ベローゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応)のカップリングを試み,微粒子に時間周期構造の付与を行う事で,周期的に体積や粒子間相互作用を変化させる新奇ゲル微粒子(自律駆動ゲル微粒子)の開発に成功している。本稿では,筆者らが検討している『ゲル微粒子の自己組織化』研究について,上述した自律駆動ゲル微粒子の話題を中心に紹介し,その発展について述べる。