抄録
直径が10 nm前後の半導体ナノ粒子(量子ドット)は、サイズの減少と共にバンドギャップエネルギーが増大する量子サイズ効果や、常温での蛍光発光など特異な性質を有する。我々は、サイズに応じて光吸収波長が変化する量子ドットの特性を利用し、光による粒径制御法「サイズ選択光エッチング法」を開発した。硫化カドミウム(CdS),テルル化カドミウム(CdTe)ナノ粒子について、単色性の高いナノ粒子溶液を得ることに成功している[1-3]。透過型電子顕微鏡観察の結果は、CdS、CdTeの何れも光エッチング反応による粒径・粒径分布の減少を示しているが、反応途中の光学スペクトル変化や反応速度が両者で全く異なっている。CdSとCdTeナノ粒子の光エッチング反応過程の違いを明らかにすることによって、反応効率を改善したり、同手法を他の種類の半導体に適用したりする際に、非常に重要な知見が得られると期待される。