抄録
本研究は、古文書を構成する料紙に含まれる微量元素を高感度蛍光X線により分析すると共に、既にデータベース化されている地質図や希土類元素分布図との相関分析を行うことにより、各料紙の産地を推定することを目的とした。紙の主原料である楮、雁皮、三椏に加え、現代和紙や古和紙から主原料や産地の異なる200点近くの試料を選択し、測定を行った。紙の原料である、楮、雁皮、三椏から得られたスペクトルには違いが認められたため、本解析手法が、古文書の原料を特定するための手法として有効であることが示唆された。しかし、様々な産地で作製された紙から得られたスペクトルはあまりにも複雑で、今のところ明確な微量元素と産地との相関は得られておらず、更なるデータ収集と解析が必要である。