抄録
これまでに我々はSPring-8の高強度X線の利点を生かし、界面活性剤溶液浸漬後の短時間(数分〜1時間)での角層のソフトケラチン構造の変化に着目し、とくに q ≈ 6 nm−1近傍に見られるプロトフィブリル由来の散乱ピークについてX線散乱法を用いた解析検討を行ってきた。しかしながらさらに高次の構造であるミクロフィブリル構造(q ≈ 0.5–1 nm−1近傍)の観測には、X線散乱法では活性剤ミセルの散乱が妨害となる課題があった。そこで角層細胞内でのケラチン線維の配向を利用した積層角層シートでの2次元散乱解析により、ケラチン線維構造を評価する手法の検討を実施した。その結果、垂直・平行方向とも散乱プロファイルにミセル由来のピークは重畳しているが、ミセル由来ピークよりも垂直方向の角層構造由来のピークは十分に強く現れ、積層角層シートを利用した2次元散乱解析の有効性が示された。