抄録
犯罪現場において犯人が無意識に遺留する微細証拠物件は、犯行を立証する証拠として非常に重要であるが、その中でも繊維は殺人のみならず傷害、交通事犯、迷惑防止条例違反等、極めて多くの罪種に関係している。法科学分野においては、微細な証拠であればあるほど、再鑑定の必要性から証拠物をそのまま残す非破壊的な鑑定手法が望まれる。さらに、無染色の繊維については情報が少なく、異同識別が困難となる場合がある。
そこで、SPring-8 の放射光を利用した小角/広角散乱分析を行えば、非破壊的にナノスケールでの繊維の周期構造や配向性等に関する情報が得られるため、繊維鑑定の識別能力の向上が大きく期待できる。単繊維の標準試料等を非破壊で分析し、データバンクを構築した。