抄録
原油中の酸性油分子の白雲母表面((001)面)への吸着は、表面のカチオンが Na+ や Mg2+ の場合に水分子を介して吸着するwater bridge構造となり、K+ や Ca2+ の場合に直接吸着するcation bridge構造となることが分子動力学(MD)計算により分かってきた。本実験では、白雲母表面のカチオンを K+、Ca2+、Mg2+ にして酸性油分子のステアリン酸を吸着させた白雲母基板に対して 20 keV の入射X線エネルギーでX線CTR散乱法の測定を行い、酸性油分子の吸着構造のカチオン依存性を実験的に確認することを試みた。今回、前回2017A1828の実験での問題点に対して対策を行った結果、L = 0.2 から L = 13.9 の範囲で概ね良好なデータが得られた。また、白雲母基板表面近傍の電子密度分布の解析結果から、白雲母表面に対するステアリン酸分子の吸着構造はMD計算の結果と整合すると考えられた。