抄録
BL39XU では、ヘリウムフロークライオスタットの導入により、磁性薄膜の XMCD 測定の温度範囲の拡張を進めている。本研究では、温度可変環境での蛍光 XMCD 測定システムの性能評価を行った。8 K, 302 K, 500 K の3温度において、Pt L 吸収端での XMCD および元素選択的磁化曲線が良好な精度で得られることが示された。測定中の温度安定性は 0.1 K 以内であり、試料位置の温度ドリフトは 0.1 mm 以内であった。連続膜の測定では問題とならないが、微細加工したデバイス試料に対してはさらなる位置安定性の改善が必要である。本研究によって、8 K から 500 K の温度可変環境での蛍光 XMCD 測定システムを利用実験に提供できる見込みが得られた。今後、本システムはスピントロニクス材料の XMCD 分光やその外場効果の温度依存性の研究に用いられる。