古気候・古環境解析に利用可能な新たな環境指標の探索を目的として、放射光軟X線を励起源とした蛍光X線分析により、イガイ (Mytilus coruscus) 殻断面中の微量元素の分析を行った。殻の主成分である炭酸カルシウム (CaCO3) に由来する信号に加えて、ナトリウム (Na)、ストロンチウム (Sr)、リン (P)、硫黄 (S)、塩素 (Cl) が数 µg/g から数千 µg/g の濃度で検出された。これら元素の面内分布を測定したところ、Sr・S・Cl の分布において成長線に対応する濃淡模様が観察された。一方、栄養塩指標として期待された P においては、年変動・季節変動に対応した変化は観察されなかった。