本研究は、常に選択の自由がある状態での作業課題実施が気分およびストレスに及ぼす影響を検証することを目的とした。常に選択の自由がある状態に設定できる作業課題としてぬり絵を用い、色を自由に塗る群を選択群、黒のみで塗る群を非選択群とした。POMS2短縮版と唾液アミラーゼ活性値を用いて課題前後の変化を評価した結果、POMS2短縮版において、選択群で「怒り-敵意」「抑うつ-落込み」「緊張-不安」の尺度得点が有意に低くなる傾向が、「混乱-当惑」の尺度得点が有意にやや低くなる傾向がみられた。非選択群では「抑うつ-落込み」「活気-活力」の尺度得点が有意に低くなる傾向がみられた。唾液アミラーゼ活性値については有意差がみられなかった。POMS2短縮版の結果から、ぬり絵では色の選択の自由がある方がネガティブな感情を軽減させる効果が得られる可能性が示唆された。唾液アミラーゼ活性値に関しては、統制条件を更に検討する必要があると考える。