2012 年 3 巻 1 号 p. 3_15-3_18
【目的】理学療法場面における転倒事故は重大な問題であり,さまざまなリスク管理が行われている。そのアウトカムにはアンケートや事故件数の集計が用いられているが,個人の能力を評価するものはない。そこで危険場面認知の反応時間課題を用いて経験による差を検証した。【方法】被験者は臨床経験5年以上のベテラン理学療法士(Expert群)と臨床経験1年未満の新人理学療法士(Freshman群)とした。起居動作訓練中の静止画像100枚をモニター上に呈示し「危険」あるいは「安全」をボタン押しにより答えさせた。画像呈示からボタン押しまでの時間を測定し反応時間とした。またボタン押しの正誤より正解率を求めた。【結果】正解率はExpert群で有意に高かった。逆に反応時間はExpert群で遅延し,特に危険場面の判断に時間を要した。【考察】Expert群で正解率が高かったことから危険場面認知に経験による差があることがわかった。反応時間の遅延についてはExpert群の情報処理量の多さが反映したと考えられた。今回の結果は「危険」「安全」判断の選択反応時間課題が理学療法士の経験に基づく危険認知能力を評価する可能性を示唆する。