社会情報学
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原著論文
企業の透明性志向が株主総会開催日の分散に与える影響
記虎 優子
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2021 年 10 巻 2 号 p. 37-53

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抄録

日本では,上場会社の株主総会は6月下旬の特定の時期に集中する傾向がある。株主総会が特定の時期に集中すると,複数銘柄を保有している株主にとっては総会への出席の機会が制約されることとなり,出席できない株主が総会における議論や説明を知ることが困難となる。したがって,株主総会はできるだけ分散して開催し,株主に対して総会出席の機会を保障することが望ましい。それゆえ,どのような企業特性が他の企業の株主総会と重複する度合いが低い日に総会を開催することを促すのかを解明することは,重要なリサーチ・クエスチョンである。

本稿では,内部統制システムに着目して株主総会の開催日の分散に寄与する企業特性を具体的に解明し,内部統制システムの構築に際する企業の透明性志向の強さが総会の開催日の分散に資することを実証的に示している。

まず,会社法に基づく内部統制システム構築の基本方針についての適時開示を利用して,基本方針の具体的内容をテキスト型データとして手作業で収集した。そして,計量テキスト分析を用いて,基本方針のテキスト型データの中に企業が内部統制システムの構築に際して企業の透明性を重視していることが表象されているかどうかを識別し,企業の(目に見えない)透明性志向を数量化した。その上で,企業が内部統制システムの構築に際して企業の透明性を重視するならば他の企業の株主総会と重複する度合いが低い日に総会を開催するのかどうかを検証した。

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