社会情報学
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原著論文
英語教育と言語相対性のポリティクス―英語支配へのメディア論的アプローチ―
岡野 一郎
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2024 年 13 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

グローバル化の時代において,英語の世界各地域への浸透はすさまじく,英語支配と呼ばれて議論されている。この現象は,単に国家間,企業間の力関係,利害関係だけで生じているのではない。明治以来現在に至るまで,日本においては,英語には実用性以外の何らかの価値が付与されてきた。本稿では,メディア論的観点,すなわち英語に付与された様々なメッセージを社会状況の変化との関連で捉えるという観点から,日本においてメディアとしての英語がたどった道を,主に英語教育政策と英語教育論争の言説の中に追いつつ,それらがどのような政治的な役割を担ってきたかを見ていきたい。それらのメッセージは,模範としての西洋文化,国際理解,そしてさらには知的訓練,生きる力の育成など,それは時代時代において異なった表現をとりつつ,英語教育推進の根拠とされたり,また場合によって論争の種となってきた。そして本稿の最後では,英語支配とグローバル化の関連を見るべく,ウォーラースティーンによる「ヨーロッパ的普遍主義」をめぐる考察を参照し,英語が現在,コロニアリズムよりも科学的普遍主義と結びついていることを示す。国際共通語としての英語はそれ自体のメッセージをはぎ取られた透明な実用的道具になったかに見える。しかし英語は現在,科学と市場が支配する新自由主義的な世界秩序を支えるメディアとなっている。これこそが現在における英語支配の問題点なのである。

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