社会情報学
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総会シンポジウム報告
新公共管理後のガバナンスと情報問題
正村 俊之
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2016 年 4 巻 2 号 p. 39-53

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抄録

1980年代以降, 行政と企業のいずれの領域においてもガバナンス改革が進んだ。行政領域では, 80年代に「新公共管理」が導入され, 90年代に「新公共ガバナンス」が成立した。新公共管理から新公共ガバナンスへの移行は, 古い形態が新しい形態に単純に置き換わる変化ではなかった。そこには, 新公共管理からの「離反・継承・発展」という三つの位相が含まれていた。一方, 企業領域でも, 企業環境の複雑化と流動化, そして企業不祥事の続発に対処するために, ガバナンス改革が進んだ。内部統制の概念が拡大され, 内部統制を基軸にしたガバナンス構造が確立された。今日のパブリック・ガバナンスとコーポレート・ガバナンスを比較してみると, 三つの共通点がある。第1に, どちらのガバナンスも, 内部コントロールと外部コントロールを組み込み, 自律的主体を強制的に生成するような構造を形成していること。第2に, 行政組織も企業組織も, 第一次機能だけでなく, 第二次機能を果たすことが強く求められていること。そして第3に, リスク管理としての共通の情報処理様式を確立しようとしていること。以上のことから, 現代的ガバナンスの成立には①収集・蓄積問題, ②変換問題, ③評価問題, ④共有問題, ⑤設計問題という5つの情報問題が含まれていることが帰結される。社会情報学は, これらの情報問題とそこに内在する社会的仕組みを解明しなければならない。

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© 2016 一般社団法人 社会情報学会
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