社会情報学
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原著論文
まちを語る主体を編み上げる:市民デジタルアーカイブ活動の生成,維持,変容の検討
中村 雅子
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2018 年 6 巻 2 号 p. 31-47

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抄録

本論文では,「市民デジタルアーカイブ活動」を,一般市民がデジタル技術を活用して地域を自分のものとして再領有化しようとする試みの中で生まれる集合体の実践と定義した。全国の主要な活動団体に対して運営者を中心とするインタビューや参与観察などの方法を用いて調査を実施し,そのうち11の取り組みについて,実践を始めたきっかけや活動の成立と維持,社会的意義について検討した。

活動は取り組みのきっかけ,中核メンバーの属性,収集するコンテンツ,情報発信の仕方など,さまざまな点で多様性が高かった。社会-技術的ネットワークの観点からの分析によって,各活動が類似の課題においても,異なる方法で解決していることが明らかになった。戦略的に人間的/非-人間的要素の混交からなるネットワークを構築することが,共通して活動の維持発展の大きな要因だった。従来の分析的視点では時に周辺化されていた情報技術の付随的に見える諸条件が,アクターとして活動を促進あるいは阻害する重要な役割をもつことが指摘された。

市民デジタルアーカイブの生成と維持には,従来,地域において散在していた人間的,非-人間的なリソースを緊密なネットワークとして結合することが必要である。また継続的な活動には,単に静的に安定したネットワークを作るだけでなく,動的に変化に対応する流動性,柔軟性が必要であることが示された。

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© 2018 一般社団法人 社会情報学会
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