社会情報学
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原著論文
国際的な人的交流と経済取引に関する分析―国籍別高度専門職者と経済取引に着目して―
小西 利充
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2020 年 8 巻 3 号 p. 129-145

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抄録

本研究は,日本が貿易を行っている主要国を対象として,ネットワーク論の観点から知識労働者による国際的な人的交流と経済取引が相関関係にあることを公開データに基づいて定量的に明らかにすることを目的とする。そして,国境を超える経済取引では,互いの国や地域が地理的に離れているだけではなく,文化的に乖離していることも障壁になると考え,国際的な人的交流と経済取引の関係に,2国間の距離として地理的距離と文化的距離の2つを加えて検証することで経済取引における距離の影響を併せて確認する。アジア地域をはじめとする新興国の経済発展や,国際交通機関や国際物流網の発達,情報通信環境の整備とともに,国際的な財貨の取引だけでなく,国境を越えたサービスや人の移動が増加している。また,貿易は国内取引に比べて地理的な距離が大きいだけでなく,商慣習や文化が異なる相手との取引であることに伴う不確実性も増す中,経済取引を促すような人的交流の重要性も増していると考える。本研究では,国際的な経済取引において,知識労働者の移動と交流が重要な役割を果たすと考え,ネットワーク理論に基づく先行研究を踏まえて,専門的・技術的分野に該当する日本での在留資格を持つ高度専門職者数と当該諸国との貿易額に着目して,国際的な人的交流と経済取引に関する分析を行う。また,国際的な人的交流と経済取引の関係に,人的交流の障壁となるものとして地理的距離と文化的距離を加え,その影響を検証する。検証の結果,高度専門職者数と貿易額が正の相関関係にあることから,知識労働者による国際的な人的交流が経済取引と相関関係にあることが明らかとなった。また,地理的距離と文化的距離が,国際的な経済取引との間でそれぞれ相関関係にあることが併せて確認された。

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