2021 年 10 巻 1 号 p. 31-36
摂食および嚥下障害による誤嚥は、食欲を低下させることから嚥下困難者の生活の質に悪影響を及ぼしている。このような嚥下困難者の食事中における液状食品の誤嚥防止には、対象者の摂食状況レベルに応じた粘性抵抗を液状食品へ付与することが効果的である。しかし、医療や介護現場では栄養士の主観と経験に基づいており、液状食品に増粘剤を定量的に付与することは困難である。そこで、液状食品の粘性を定量的に評価する簡易的な測定器を開発した。得られた値をThickness Resistance Value(Tr値)と定義し、本測定器独自の単位として扱う。本研究では、増粘剤を添加した飲料水の時間依存特性によってTr値と粘度の関係を解明した。また、増粘剤および介護食のTr値を用いて物性表を作成し、その有用性を検討した。その結果、Tr値と粘度は強い正の相関が確認された(水:r = 0.94、茶:r = 0.98、果汁飲料:r = 0.97)。これより、Tr値は増粘剤や飲料水の種類によらず粘度に類似した値を得ることが明らかとなった。一方、複数の増粘剤や介護食からなる物性表は、他職種間でも共通認識が持ちやすいことから、栄養指導や連携のツールとなりうることが期待される。