科学・技術研究
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10 巻, 1 号
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特集
総論
主張
  • 繋がった喜びを大切に
    伊藤 智博
    2021 年 10 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、山形大学の計算センターが、インターネットの発展とともに歩んできた歴史を述べる。それは、繋ぐことから始まった。繋げるようになると、ルータの故障対応、サーバの構築、ソフトウェアの日本語化を進めた。2000年頃になると、家庭にもインターネットが広まり、ファイアーウォールによるセキュリティ対策を実施した。2005年には、ユーザアカウントの肥大化を抑えるためにシングルサインオンが導入され、フィッシング詐欺を避けるために電子証明書を導入した。東日本大震災では、通信回線の脆弱性を浮き彫りになり、後に通信回線や電源を冗長化した。2019年には、世界的に感染が拡大続けているCOVID-19の感染拡大を防ぐため、無線LANの増強やウェブ会議ツール、仮想デスクトップやVPNの利用を支援した。40年が経過しても、何も変わっていない。いかに、利用者を計算センターのサービスに接続させ、円滑な教育環境を提供するかに尽きるようである。
原著
  • 遠藤 彩華, 高橋 史夫, 小野寺 良二, 宍戸 道明
    2021 年 10 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    摂食および嚥下障害による誤嚥は、食欲を低下させることから嚥下困難者の生活の質に悪影響を及ぼしている。このような嚥下困難者の食事中における液状食品の誤嚥防止には、対象者の摂食状況レベルに応じた粘性抵抗を液状食品へ付与することが効果的である。しかし、医療や介護現場では栄養士の主観と経験に基づいており、液状食品に増粘剤を定量的に付与することは困難である。そこで、液状食品の粘性を定量的に評価する簡易的な測定器を開発した。得られた値をThickness Resistance Value(Tr値)と定義し、本測定器独自の単位として扱う。本研究では、増粘剤を添加した飲料水の時間依存特性によってTr値と粘度の関係を解明した。また、増粘剤および介護食のTr値を用いて物性表を作成し、その有用性を検討した。その結果、Tr値と粘度は強い正の相関が確認された(水:r = 0.94、茶:r = 0.98、果汁飲料:r = 0.97)。これより、Tr値は増粘剤や飲料水の種類によらず粘度に類似した値を得ることが明らかとなった。一方、複数の増粘剤や介護食からなる物性表は、他職種間でも共通認識が持ちやすいことから、栄養指導や連携のツールとなりうることが期待される。
  • 服巻 晃志, 大角 義浩, 清山 史朗, 塩盛 弘一郎, 幡手 泰雄, 武井 孝行, 吉田 昌弘
    2021 年 10 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    芝生は、家庭や公園のような身近な場所からゴルフ場などの広域なものまで、様々な場所で利用されている。芝生が生育する場所では、管理のために定期的に芝刈りを行う必要がある。芝刈りで発生する刈かすは、堆積してサッチ層となり、芝の目詰まりや病原菌の温床となることから、芝に様々な障害を引き起こす。そこで本研究では、微生物(サッチ分解菌)の分解能力に着目し、カプセル化することでサッチ層の除去効果を持続させるための基礎的検討を目的としている。 具体的には、サッチ分解菌の選定およびアルギン酸カルシウムを璧材としたサッチ分解菌内包カプセルの調製を行い、さらに糖類溶液(グルコース、スクロース、トレハロース)による保護剤処理によって、サッチ分解菌の長期安定化を試みた。候補となる複数のサッチ分解菌でセルロースの分解試験を行った結果、Bacillus pumilus NBRC12092を選択した。保護剤処理をカプセルに対して行うことで、カプセル内の分解菌を乾燥処理による負荷から保護することができた。 保存安定性試験では、カプセルの形状を崩壊することなく保ち続け、0.2 mol/Lスクロース水溶液を用いた保護剤処理を行うことで、21日経過した後もカプセル中で約108 CFU/gと高い生菌数を保持していた。さらに、サッチの主要成分であるセルロースの分解能力も維持していた。
  • 瀬戸山 央
    2021 年 10 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒトの体内で過剰に生じた活性酸素(ROS)は酸化ストレスとして作用し、老化の要因となることが明らかになっている。モデル生物である線虫においても、ROSと老化に深い関わりがあることが明らかとなっている。線虫に対して、体内でROSを生産させるための化合物としてパラコートが用いられている。高濃度パラコート(100 mM)は、線虫に対して体内のROSを増加させ致死的に働くが、低濃度パラコート(0.1~0.2 mM)は、線虫に対して体内抗酸化酵素活性を上昇させ、寿命を延長させる。一方、数mM~数十mMのパラコートが線虫に与える影響についての報告は少ない。そこで、本研究では2.5~10 mMのパラコート処理が線虫に与える影響について、体内のROS生成及び抗酸化酵素(SOD、CAT)活性に着目して解析を行った。その結果、パラコート処理の期間が長いほど、またパラコート濃度が高いほど体内ROS生成量が増加し、SOD活性が上昇することを明らかにした。
  • Shinichi Funase, Toshihiko Shimauchi , Haruhiko Kimura
    2021 年 10 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    System failures include hardware failures and software failures. However, most of them are software failures. A redundant system is usually used to improve the reliability of hardware, but even if the same redundant principle is applied to a software system, each module (program) is a copy of the original, resulting in errors occurring in the same location without improving the reliability. Additionally, although a hardware failure can be detected relatively easily by human five senses, a software failure is difficult to be detected except in extreme cases such as when the system is stopped or gets out of control. To address these issues, this paper proposed a system that enables a robust redundancy for software. The proposed system monitors the control flow of the software and when an irregular flow is detected, the control flow shifts to another module with same function but different coding. The proposed redundant system is superior to existing single module system or other redundant systems in detecting errors and improving software reliability.
  • 横田 正, 服部 哲也, 衛藤 英男
    2021 年 10 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    麦茶は、日本では特に人気がある飲料のひとつである。夏には、喉の渇きを潤す非常に一般的なものである。コーヒーよりも健康的であると推奨され、香りと栄養素が得られる。日本人は健康長寿で有名である。カフェインで興奮する敏感な人にとっては、それが含まれていないため安全である。抗酸化作用、ペルオキシナイトライトの抑制活性および血糖値の通常レベルへの活性効果があると言われている。それに加えて、ほろ苦い香りは、朝の今日一日の始まりをリフレッシュする。今回、麦茶の現在までの研究結果を機能性とそれに関連した成分について議論した。
  • 仁科 辰夫, 伊藤 智博, 立花 和宏
    2021 年 10 巻 1 号 p. 57-60
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    現在、ポストリチウム電池として全固体電池が注目されている。全固体電池は引火性の強い有機溶媒を使用しないため安全性が高く、急速充電が可能であると喧伝されている。しかし、現在の全固体電池では急速充電時の負極へ金属リチウムが析出し、正極とのマイクロショートが問題となっている。液系LiBに対する電極モデルとしての2段分布定数回路の手法を全固体電池にも応用し、その解析関数の導出に成功した。この解析関数を活用して、合材電極内の電流分布を短時間で一様化する条件を探索した。その結果、電子抵抗をイオン抵抗の40%程度とすることで、充放電速度を犠牲にすることなく電流分布の均一化が期待でき、金属リチウム析出の抑制が期待できることが分かった。具体的にはSiなどの電子抵抗の大きな活物質材料との混合使用により、容量を犠牲にせずに電子抵抗の調整をはかることが有望であろう。
短報
  • 梅村 一之, 今 拓己, 鈴木 裕善, 金田 圭隆, 岩坂 健志
    2021 年 10 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ワタセマイシンは、富山湾海洋深層水中の放線菌(Streptomyces sp.)TP-A0597から単離されたグラム陽性およびグラム陰性菌、さらに酵母等に活性を示す新規抗生物質である。その構造は、連続したチアゾリン環とチアゾリジン骨格からなる特徴的なものである。本論文では、サリチル酸を出発原料とし、アミノ酸との縮合条件を最適化しアミド誘導体とした後、分子内環化反応によりチアゾリン環を構築し、次いでアルデヒド誘導体とシステイン誘導体からのチアゾリジン環への変換を鍵反応とした初めてのチアゾスタチンおよびワタセマイシンの合成研究について報告する。
  • 松橋 将太
    2021 年 10 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新型コロナウィルスの感染増加により、従来の様な実技授業の実践が難しい状況になった。運動機会は健康管理、健康維持に必要な生活行動の一つである。新型コロナウィルスによる自宅待機となり、学校教育においても必要な運動機会の確保が困難になると予期され、遠隔教育による「保健体育授業」を実践した。この遠隔教育では、自宅居室内で実践できる体育プログラムを用いて、自己の健康維持に向けた運動の継続実践態度を学ぶこと、自己の体調に合わせて、エクササイズを工夫して組み立てる能力の養成を目的とした。遠隔教育による体育授業プログラムの実践報告例は少なく、実技を伴う科目における教育方法の新しい様式の一例を報告する。
  • Shinichi Funase , Toshihiko Shimauchi, Haruhiko Kimura
    2021 年 10 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    The authors have proposed an automated inspection on the control flow of computer programs, but its theoretical analysis has not been reported by other researchers yet. The automatic inspection on the control flow of a computer program is to check whether instructions are executed in intended order while executing the target program. The authors developed this automatic inspection by tracing the inconsistency between the execution of the target program and the general flowchart while using an interpreter to trace the flow. In this paper, after theoretically confirming each process of the automatic inspection algorithm, the following three points are discussed regarding the equivalence of the flow chart control flow and the program control flow. (1) The number of control flow paths in the flowchart is shown to be less than or equal to the number of program control flow paths when the program is coded correctly. (2) The necessary and sufficient condition for the input set selecting the control flow path of target-P which does not satisfy any control flow in GF to become empty set is that the macro statement becomes allocation statement for any input value, provided that the branches described in the flowchart are correctly coded. 3) we discuss the equivalence of the flow chart control flow and the program control flow.
技術報告
  • Improvement of characteristic by changing two components
    Daisuke Tanaka, Susumu Nakayama
    2021 年 10 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    This study aims to identify the factors affecting the characteristics of samples, such as photoluminescence intensities, and identify the relationship between performance improvement and the search parameters for material composition. Subsequently, we optimize the experimental conditions to provide the maximum characteristic value. First, the process parameters are introduced as input values to the artificial intelligence (AI)-based model; then, we obtain a generalized equation to establish relationship between the characteristics of the samples and the process parameters. Subsequently, the new samples suitable for determining an accurate model and optimizing the process parameters are calculated and recommended to the user. Finally, the obtained formula is optimized, and the optimum values for achieving maximum characteristic are determined. Experimental validation using the AI program developed in this study found that the two components (x, y) that provide the strongest PL intensity in the Srx(La10–x–yEuy)(SiO4)6O3–x/2 (x=2–6, y=0.6–1.2) red-emitting phosphors can be easily estimated from approximately 10 initial data points.
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