ワタセマイシンは、富山湾海洋深層水中の放線菌(Streptomyces sp.)TP-A0597から単離されたグラム陽性およびグラム陰性菌、さらに酵母等に活性を示す新規抗生物質である。その構造は、連続したチアゾリン環とチアゾリジン骨格からなる特徴的なものである。本論文では、サリチル酸を出発原料とし、アミノ酸との縮合条件を最適化しアミド誘導体とした後、分子内環化反応によりチアゾリン環を構築し、次いでアルデヒド誘導体とシステイン誘導体からのチアゾリジン環への変換を鍵反応とした初めてのチアゾスタチンおよびワタセマイシンの合成研究について報告する。