抄録
超高齢社会に突入したわが国では、高齢者の自動車運転や事故を対象とした研究事例が多い一方で、高齢者に次いで交通事故件数の多い若年者を対象とした研究事例は少ないのが現状である。そこで本研究では、交通事故の加害者になりやすい若年者に着目し、JAF制作の危険予知トレーニングビデオと視線追跡システムを用いて、運転中の注視行動の望ましさの程度から被験者のグループ分けを行うとともに、被験者に対してヒアリング調査を実施し、運転頻度や運転に対するイメージ等の被験者属性の他、ビデオ視聴中の意識について把握した。上記、視線追尾システムの解析結果およびヒアリング調査結果から、主に運転に不安を感じている被験者であっても、ビデオ視聴中の視線望ましさの程度にはほとんど影響しないこと、運転技術に自信を持っている被験者であっても、運転中の思い込みにより危険予測が十分にできないことが確認された。本研究結果に対する評価として、教習所職員からは、室内で個人特性を踏まえた注視特性を可視化するができれば、効果・効率的に指導することができるといった評価を得るとともに、警察署職員からは、本研究結果は実社会の動画を活用していることから、注視特性の可視化技術は被験者の自覚をより促すことが期待できるといった評価を得た。