科学・技術研究
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原著
自閉スペクトラム症児への早期介入に向けたリスク要因の探索について
母子健康手帳における幼少期の社会性とコミュニケーション項目に着目して
渡辺 俊太郎向山 秀浅野 克俊
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 13 巻 2 号 p. 131-138

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抄録
自閉スペクトラム症(以下、ASD)児は幼少期からの早期介入が重要であると言われている。しかし高機能ASD児においては診断年齢が高く、3歳児検診においても検出が不十分であることが示唆されている。今回、全国的に交付率の高い母子健康手帳を使用して高機能ASD児の早期発見・診断・療育の一助となるための研究を行った。参加者はASDの診断を受けており、普通小学校へ通学している児童を対象とした。現在の言語機能や認知機能を測るために自閉症スペクトラム指数日本語版・児童用(以下、AQ)と学齢版言語・コミュニケーション発達スケール(以下、LCSA)を使用した。また一定水準の認知機能を有するASD児を参加者とするためWICS-Ⅲ又はWISC-ⅣにてIQ70以上の児童を対象とした。母子健康手帳の「保護者の記録」から抽出した2項目において「はい」群「いいえ」群のAQとLCSAのt検定を使用して有意差をみた。結果、【保護者の記録:3歳の頃】における「自分の名前が言えますか」の「はい」群と「いいえ」群のAQ下位検査の「社会的スキル」項目において2群の平均に有意差がみられた。この結果からASD児において仮に3歳時に名前をいう事が出来ても、その後の社会適応が良好となるだろうと予測する事は安易である。早期から他者との感情の共有や他者理解を意識した介入が必要である可能性が明らかとなった。
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