抄録
フレイル(虚弱)は要介護状態になる原因であるため、その予防は健康寿命を延長させるためには不可欠である。フレイル予防の方法としては、運動療法とともに、文化的・社会的交流を伴う活動を行うことが推奨されているものの、運動療法以外の介入方法及び効果測定指標は確立されていない。本研究では、予備的研究として2名の高齢者を対象に高齢者に比較的なじみがあり、社会的交流を伴う農作業を用いて、その効果的な介入方法及び測定方法を検討することを目的とした。週1回120分の農作業プログラムを2ヶ月間、計8回実施した。プログラムは、健康チェック、準備、農作業、後片付け、振り返りで構成され、農作業の内容は、ユーカリの収穫作業と加工としてのクラフト作業とした。介入前後とその2ヵ月後に、運動面、精神・心理面、生活面の9項目の測定を実施した。結果、介入実施前後で、対象者の運動能力と主観的QOLが向上し、自己効力感が高まり、外出頻度の増加が確認できた。ことから、農作業を用いた介入は運動能力面、精神・心理面、生活面に総合的に影響を与え、今回使用した評価指標9項目は農作業療法の効果測定指標として有用である可能性が示唆された。今後、本研究から得られた結果をもとに、地域在住高齢者へ農作業療法を展開し、その介入方法や効果測定指標についてさらに検討していく。