抄録
現在、大気・海洋間の熱フラックスを求める際に使用されているデータの1つとして海表面温度(Sea Surface Temperature: SST)データがある。また、地球温暖化など地球環境に密接に関係しているため全球規模での評価が必要となる。そこで全球規模でSSTを観測している人工衛星データおよび再解析データが有用となる。しかし人工衛星および再解析データによるSSTデータは実測値ではなく推定値であるため、常に精度の評価をすることが重要である。また全球に影響を及ぼすエルニーニョ・ラニーニャ現象が観測される、低緯度帯における人工衛星データおよび再解析データの精度検証を行うことは重要である。そこで本研究では、多く人工衛星データを使って構築された複合人工衛星GHRSSTデータ、NCEP-R1とNCEP-R2再解析データそしてECMWF再解析データの精度についてブイデータと比較し検証を行った。精度比較に用いたブイデータは、TAO(Tropical Ocean Atmosphere)/ TRITON(Triangle Trans-Ocean Buoy Network)ブイ(16点)、PIRATA(Pilot Research Moored Array in the Tropical Atlantic:熱帯大西洋係留アレー試験研究)ブイ(5点)、RAMA(Research Moored Array for African-Australian Monsoon Analysis and Prediction)ブイ(4点)である。使用データ期間は2009年の一年間とした。低緯度帯全域におけるGHRSST、ECMWF、NCEP-R1、NCEP-R2のRMS差を算出した結果、それぞれ0.209 ℃、0.333 ℃、0.397 ℃、0.396 ℃となりGHRSST以外は全て公証測定精度0.3 ℃を超えた。海域毎のRMS差においてもGHRSSTはどの海域も精度が良く、全ての再解析データはどの海域でも精度が悪いことが示された。