抄録
現在、大気・海洋間CO2収支を求める際に用いられる海面でのCO2輸送速度は、一般に高度10 mでの風速U10のみの関数で表わされていることが多いが、まだ確立されてない。その主な理由は、全球において風波、砕波、うねりなどの影響が十分考慮されていないことである。その中でも、砕波によってCO2が多く取り込まれていることは既往研究によって明らかにされている。本研究では、Monahan and Spillane (1984)の式において、風速のみの関数であるWanninkhof(1992)の式とZhao and Toba(2001)による白波の面積比と風波レイノルズ数の関係式を用いることで、砕波の入れ方をより精密にした新たな大気・海洋間CO2輸送速度の計算手法を提案した。そしてECMWFによる風速U10および風波の周期データセットを使用して全球規模での大気・海洋間CO2収支を積算した。その結果、 1.47 PgC/yearであり、風速のみの関数であるWanninkhof(1992)に比べて差は約25 %であった。また緯度毎に比較した結果、本研究の計算手法は高風速域である中緯度帯ではWanninkhof(1992)よりも大きい値を示し、低風速域である低緯度帯で、Wanninkhof(1992)に近い値を示した。したがって、主に低風速である低緯度帯では風速のみに依存するが、主に高風速である中緯度では砕波の効果が顕著であることを示していると考えられる。