本研究では、繊維の配向、繊維の種類、織組織を変化させた織物を使用し、撚り構造が炭素繊維織物の力学的特性に及ぼす影響について実験的に検討した。評価方法としてはKES法の標準測定試験条件を元に、圧縮試験、曲げ試験を用いた。圧縮特性については、各試料において撚り数10、30 T/mでは圧縮仕事量は増加し、その後減少した。偏平である繊維束に撚りを少し施すことで繊維束の形状が楕円から円に近づき、厚みを生じる。厚みが増加することにより、圧縮仕事量は増加する。一方、撚りが多くなるにつれて繊維束の締め付け力が大きくなり、硬くなる傾向にある。すなわち、圧縮仕事量は減少する。この繊維の性質が結果に表れたと考えられる。曲げ特性については、すべての織物において曲げ剛性は撚り数の増加とともに増加し、撚り数が100 T/m以上になると減少した。繊維束に撚りを施すことで繊維束の締め付け力が大きくなり硬くなる傾向にあるが、撚り数がある一定値を超えると織物が平面を保てなくなり、面外に変形した。以上のように、繊維構造ハイブリッドの概念を炭素繊維織物に適用することにより、強化形態である織物の力学的特性を変化させることが可能であることがわかった。