科学・技術研究
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主張
多剤耐性菌が社会にもたらす影響
ポストコロナ時代に備える
浦野 直人 高塩 仁愛
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 9 巻 2 号 p. 109-114

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抄録

筆者らは科学・技術研究会誌に学術論文-多摩川における多剤耐性菌の蔓延度解析(浦野他, 2013)を掲載したが、この論文には予想を上回る反響があった。ここでは、当該論文を起点とする筆者らの研究を中心に「多剤耐性菌が社会にもたらす影響」を評論する。新型コロナウイルスは発生から1年近い歳月が過ぎようとしているが、未だに世界中で猛威を振るっており、私達は感染症の脅威を再認識させられた。時期尚早と思われるかもしれないが、ポストコロナ時代の感染症にも目を向けて行く必要性を感じている。ペニシリンに始まる抗菌薬の開発以来、数々の感染症が次々と克服されて来たが、一方で抗菌薬が薬効を示さない耐性菌群が急激に増大している。当該菌群が真にもたらす社会的な影響は、これから始まるのだと推察される。本報では大都市水圏に生息する多剤耐性菌を中心に記述するが、耐性菌対策にはワンヘルスアプローチの重要性が提唱されている。ポストコロナ時代の感染症として、多剤耐性菌が大きくクローズアップされる事態が到来しないことを期待しながら、本報に目を通していただきたいと願う。

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