現代社会学理論研究
Online ISSN : 2434-9097
Print ISSN : 1881-7467
イデオロギー論から象徴的統制論へ
バーンスティン理論におけるアルチュセール的視点導入の意義
高橋 均
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2008 年 2 巻 p. 61-73

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抄録

アルチュセールのイデオロギー論は、再生産論・主体化論として新たな理論的地平を切り拓いた。バーンスティンの象徴的統制論には、このイデオロギー論の影響が随所に現れている。彼は、アルチュセール的視点を自家薬龍中の物としそれらを自らの理論へと暗黙に取り込み、再配置している。バーンスティンがイデオロギー論に魅了され、それと相同性のある議論を展開したのは、現実的諸条件との想像的(査曲的)関係を創り出し、それを本当のものとして諸個人に誤認させ、主体を形成するというアルチュセールの主体化をめぐる議論にアクチュアリティをみいだしたからである。バーンスティンは、イデオロギー論に依拠しつつ、それを「非一決定」のロジックを織り込んだ象徴的統制論として展開させ、①象徴的統制の諸機関/担い手の相対的自律性を示すことにより、「道具主義的国家観」の修正を可能にする視点を提示、②イデオロギー論における「誤認」を諸個人が受け入れるメカニズムをめぐる説明の欠如を補完、③相互作用(呼びかけ一応答)における「類別」・「枠づけ」の動的関係という視点を導入し、主体化過程における矛盾・裂け目・ディレンマを理論に組み込むことで、イデオロギー論における主体化のペシミズムを補完した。アルチュセールの理論的遺産を、自らの理論の発展の「不可欠な基盤」とし、さらにそれを精綴化・発展させたバーンスティンの理論的営為の意義は看過できない。

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© 2008 日本社会学理論学会
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