2017 年 45 巻 3 号 p. 161-166
胸部大動脈瘤に対する治療の第一選択は人工血管置換術とされているが,近年Total debranchingを含むハイブリッド手術も行われるようになってきた。そこで胸部大動脈瘤に対する治療として人工血管置換術とステントグラフトを用いたハイブリッド手術の成績を比較検討した。当院における2009年7月から2014年10月までの真性瘤と慢性解離の広範囲胸部大動脈瘤の48症例を対象として早期治療成績の比較を行った。人工血管置換術群(T群)は38症例,ハイブリッド手術群(H群)は10症例であった。術前のリスク評価として算出したJapan Scoreでは30日死亡率+合併症率は,H群で有意に高値であった(p<0.01)。結果は,両群間に手術死亡率,入院死亡率に有意差を認めなかった。H群はT群よりも手術時間およびICU滞在期間が有意に短かった(p<.001, p=0.0162)が,人工呼吸器装着時間,術後入院期間に有意差を認めなかった。術後合併症としては低拍出量症候群と脊髄梗塞をT群では認めなかったのに対して,H群ではそれぞれ1例ずつ認め,有意に高率であった(p<0.05)。H群は,T群に比べてより高齢で術前リスクスコアが高い症例が多かったが,術後の手術死亡率,入院死亡率に有意差を認めず,有効な治療法と考えられる。今後,手術適応を厳密に行い,手術手技の安全性を高めることにより,胸部大動脈瘤に対するステントグラフトを用いたハイブリッド手術が有効な治療法として確立される可能性が示唆された。