2004 年 16 巻 3 号 p. 383-389
耳鼻咽喉科領域の疾患には心因的要素が関与しているといわれるものが多い.これらの疾患は日常診療においてしばしば経験されるにもかかわらず, 実際にはその治療に難渋することが多いと思われる.このような疾患の一つとして自発性異常味覚症や舌痛症に代表される口内異常感症があるが, 我々は最近, うつの一症状ととしての自発性異常味覚があるということ, さらに口内異常感症は他の疾患に比べてうつ領域に入る症例が多いということを報告した.そこで, 近年うつ病の第1選択薬となっているSSRIを使用し口内異常感症に対する効果を検討したところ, 抗不安薬よりもSSRIが治療効果は高かった.我々は, 耳鼻咽喉科領域の症状のみを訴えて来院するうつ状態の患者は可能な限り耳鼻咽喉科の医師が治療をしたほうがよいと考えている.耳鼻咽喉科医でも抑うつ状態の治療を要するときもあるという認識が必要と思われる.