著者らは,これまでにホタテガイに環境ストレスを負荷させたときのへい死に至る活力低下は,閉殻筋のアルギニンリン酸量により予測可能なことを示した。本研究では,養殖の現場で活用可能なアルギニンリン酸量の評価基準を設定するため,ストレス負荷によりアルギニンリン酸量が減少した貝を正常な飼育環境に戻して,回復とへい死の境界となる残存値の推定を試みた。その結果,アルギニンリン酸量が概ね 5 μmol/g 以下に減少すると,飼育環境をストレス負荷前の条件に戻しても,貝の活力は回復せず,へい死に至る可能性が示唆された。