2021 年 87 巻 2 号 p. 89-99
漁獲可能量(TAC)の基礎となる生物学的許容漁獲量(ABC)は,今年の資源評価結果に漁獲制御規則を適用し翌年の値が算定される。ABC算定における時間遅れの資源管理への影響について検討した。スルメイカ秋季発生系群とマイワシ対馬暖流系群に対し,過去の時点からABC通りの漁獲を行った場合の資源の挙動を見た。結果は,再生産成功率,ABC前年の漁獲係数,年齢別体重等の変動が大きい場合には管理が失敗する可能性が高いことを示している。時間遅れの解消とともに,実態に即したシミュレーションでの検討が重要である。