瀬戸内海の芸予諸島海域の瀬戸田, 加島の2カ所で, それぞれ産地の異なる2群のマダイ人工種苗0歳魚と漂流ハガキを同時に放流し, マダイの移動と流れの関係を検討した。放流マダイの産地による再捕率の差は認められなかった。瀬戸田, 加島ともマダイは南西方向に移動した。瀬戸田放流群の移動速度は0.34km/dayであり, 放流後10日間ごとの分布域の大きさはその中心から10kmでほぼ一定であった。加島放流群の移動速度は瀬戸田放流群に比べて遅かった。瀬戸田の漂流ハガキの移動速度は1.29km/day, 加島のそれは1.36km/dayであった。ハガキの移動速度はマダイの移動速度の約4∿5倍と異なるが, 移動方位は一致した。このことは, マダイ0歳魚の移動の要因の一つとして流れが関与していることを示唆する。