抄録
北海道苫小牧沿岸域において採集された32種の魚類の胃内容物から, カレイ類を含む底生魚類群集の食性を調べ, さらに魚類群集にとって主な餌生物であるマクロベントスの季節的変動との関係について検討した。その結果, カレイ類は調査期間を通して多毛類のカナブツイソメを専ら利用していた。その他の主要な魚類は6,8月においては稚仔魚類を, 8,9月においては多毛類のカナブツイソメを, 12月にはアミ類やエビ類を主に補食しており, 季節によって異なった餌生物を利用していた。これらの結果は, 底生魚類が餌生物を選択するうえで, 季節的な餌生物の豊度やサイズによる利用可能性に強く影響を受けていることを示している。特にカナブツイソメの加入の見られる夏期においてカナブツイソメが多くの魚類の重要な餌資源となっていた。