膵臓
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特集:膵炎研究モデルの作製,選択,適用
ハムスター膵癌細胞を用いた膵癌の転移特性の解明および治療実験の意義
内田 英二松下 晃柳 健廣井 信相本 隆幸中村 慶春福原 宗久横山 正田尻 孝
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2008 年 23 巻 1 号 p. 60-65

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抄録
膵癌は早期より転移を生じるため,その制御は予後改善に重要である.新しい観点からの基礎的研究が行われているが,特に分子生物学的知見からヒトへの応用までの過程には実験モデルによる検証が必要である.われわれはN-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP)をシリアンゴールデンハムスターに皮下注射し発生させた膵癌からPGHAM-1細胞株を樹立した.PGHAM-1細胞による膵癌モデルは,病理学的特性および生物学的特性もヒト膵癌に類似し,膵内,脾内,腹腔内という3種類の同種移植方法によって,膵腫瘍,肝転移,腹膜播種というヒト膵癌におけるすべての病態を21日という短期間で実験的に作製できる.このモデルは,転移特性の解明とともにその特性を生かした治療実験も可能であり,各種の血管新生阻害剤の治療実験でも,転移率,腫瘍径,微小血管密度などの検討から有用性が示された.動物を用いた研究モデルに関しては,実験動物をとりまく社会的環境の変化からも,屠殺することなしに生体観察が可能な方法など,さらなる改善が望まれている.
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© 2008 日本膵臓学会
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