2008 年 23 巻 5 号 p. 594-599
59歳女性.直腸腫瘍による排便時出血を主訴に来院し,腹部CTで膵体尾部に4cmの嚢胞性腫瘍を認めた.精査の結果,主膵管型膵管内乳頭粘液性腺癌(intraductal papillary mucinous carcinoma,以下IPMC)と診断した.術前診断では腫瘍は膵体尾部に限局し,明らかな浸潤所見は認めなかった.術中所見でも浸潤癌の所見なく腹腔鏡補助下膵体尾部切除を施行した.腹腔鏡下に膵体尾部脾臓を後腹膜より剥離し,上腹部正中に6cmの皮切をおき小開腹にて体外へ誘導した.超音波外科吸引装置(CUSA)を用いて膵を切離,主膵管を結紮切離し,切除を終了した.術後病理でIPMC(pTis, pN0, M0, Stage 0)と最終診断し,術後第12日目に退院した.本症例ではCUSAを用いた膵実質切離手技を腹腔鏡補助下膵切除に応用し術後経過良好であった.IPMCに対しても詳細な術前·術中診断を行い,症例を選択すれば腹腔鏡を用いた低侵襲手術が可能と考えられた.