膵臓
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総説
遺伝子改変マウスを用いた急性膵炎研究の現状と今後の展望
真嶋 浩聡大西 洋英
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2012 年 27 巻 4 号 p. 584-592

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抄録

急性膵炎は,トリプシノーゲンの異所性活性化をひきがねとして,消化酵素により組織が自己消化を受ける病態であり,トリプシンが中心的な役割を果たすと考えられてきた.しかし,急性膵炎は自己消化に止まらず,血流障害,炎症細胞浸潤,局所的・全身的な炎症症候群などの多くの側面をもち,近年の遺伝子改変モデルを用いた研究成果の蓄積はこの考えに疑問を投げかけている.IRF2ノックアウトマウスは急性膵炎発症の初期像を呈する遺伝子改変マウスであり,SNARE蛋白質の変異から膵調節性外分泌が障害され,腺房細胞内でオートファジー,トリプシンの亢進が生じている.IRF2が制御する調節性外分泌,このマウスで生じている細胞内シグナル異常を分子レベルで解明することは,急性膵炎の発症機構,トリプシノーゲンの異所性活性化のinitial triggerの解明につながる可能性を秘めている.

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© 2012 日本膵臓学会
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