2012 年 27 巻 4 号 p. 617-625
症例は67歳男性.2008年,左下腹部痛を主訴に当院を受診し腹部超音波検査(以下US)で膵頭部に腫瘤を指摘され,精査加療目的で当科に入院となった.US上,膵頭部に径10×10mmの低エコーで一部高エコーが混在した腫瘤を認めたが主膵管の拡張はなかった.MDCTの冠状断の動脈相で膵頭部に淡い低吸収域の腫瘤を認め,その腫瘤は主膵管と離れた膵被膜直下に存在していた.ERCPでは,膵管に途絶像や狭窄像はなく胆管の狭窄もなかった.Stage I膵癌と診断し,外科に転科し膵頭十二指腸切除術を施行した.開腹所見では腹膜播種や肝転移を示唆する所見はなかった.術後病理診断は,浸潤性膵管癌(高分化から低分化の管状腺癌)で,No13aのリンパ節に転移を認めたことよりStage IIであった.稀な示唆に富む主膵管に変化のない小膵癌を報告する.