抄録
症例は24歳男性.繰り返す意識消失発作で救急搬送され,著明な低血糖を認めた.CTおよびMRIにて膵尾部に11cm大の内部不均一で充実性成分を伴う巨大な腫瘤を認めた.精査の結果,インスリノーマと診断し,腹腔鏡下膵体尾部切除を施行した.病理組織学的には腫瘍の広範囲でインスリン産生性を示し,一部でグルカゴン産生を示す領域が確認され,グルカゴン産生成分を伴う膵インスリノーマと診断した.術後3年2か月経過した現在,無再発生存中である.本例のようにインスリノーマにグルカゴン産生成分を伴い,かつ腫瘍径が11cm大の症例は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.