我々の施設では他の画像診断法では捉えられないIPMN併存膵上皮内癌はERCP下膵液細胞診でのみ診断可能であると考え,IPMN患者に対して積極的にERCP下膵液細胞診を行っている.実際,これまで経験したIPMN併存膵上皮内癌9例のうち4例をERCPのみで診断した.またworrisome featuresを持つIPMNの中から悪性IPMNを拾い上げるのにもERCP下膵液細胞診が有用である(感度100%,特異度92%).局在がわからないIPMN併存膵上皮内癌の同定には術中残膵洗浄細胞診が有用であるが,洗浄液漏出による術後播種再発や,洗浄細胞診偽陰性の可能性が課題として残る.最近では膵癌を合併しやすいIPMNの特徴としてMUC2陰性,野生型GNASなどが指摘されており,これらを膵癌発症高危険群として重点的にERCP下膵液細胞診を行うことで,膵癌を効率よく早期に診断することができる可能性がある.