膵臓
Online ISSN : 1881-2805
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ISSN-L : 0913-0071
特集 膵疾患の病理学的診断の現状と課題
膵癌の初期発生とリキッドバイオプシーによる分子診断
岡田 哲弘水上 裕輔林 明宏河端 秀賢佐藤 裕基河本 徹後藤 拓磨谷上 賢瑞小野 裕介唐崎 秀則奥村 利勝
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2020 年 35 巻 4 号 p. 302-312

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抄録

膵癌のゲノム解析では,4つの遺伝子異常(KRASCDKN2ATP53SMAD4変異)を高率に認める.最近の研究により,ゲノム,遺伝子発現,タンパク,代謝などの様々なレベルでの異常が明らかとなり,これらのプロファイリングによる個々の患者の発癌や進行パターン,治療効果予測に応用されることが期待される.2019年に適切な薬物治療の提供を目的とした遺伝子パネル検査が保険収載され,本格的なゲノム医療の時代を迎えた.このような新しい診断技術を早期膵癌の発見や遺伝素因など高い発癌リスクを有する人々の発病予防を目指した医療へと拡大するには,多様な分子異常の検出方法の確立が求められる.これら膵癌の分子診断には,膵内の多発病変の存在と腫瘍内の不均一性,癌のクローン進化の理解が重要となる.本稿では,膵癌の発生過程でみられる分子異常を概説し,診療への活用が期待される最新の技術革新について紹介する.

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© 2020 日本膵臓学会
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