2024 年 39 巻 4 号 p. 270-279
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は,胃型,腸型,膵胆道型の3亜型に分類され,最も頻度の少ない膵胆道型IPMNは,悪性度が高いとされるが,主膵管内進展しやすい腫瘍かどうかは不明である.症例は75歳,女性.超音波内視鏡検査で膵頭部主膵管に15mm大の隆起性病変を認め,離れて3mm大の小結節を尾側方向に認めた.ERP時の生検から膵胆道型IPMN,高異型度の診断が得られ,小結節を含め膵頭十二指腸切除術を施行した.術中迅速診断では,膵体部切除断端の主膵管粘膜に高異型度IPMNを認めたため膵全摘術を施行した.永久標本では,膵頭部主膵管に充満するように最大径約15mmの膵胆道型浸潤性IPMNを認め,異型上皮が膵尾部方向に約9cmの範囲で主膵管内進展を示していた.膵胆道型IPMN(主膵管型)では,予想外の主膵管内進展を示すことがあるため,術中迅速診断を併用し切除範囲に十分留意する必要がある.