日本海水学会誌
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超微細海水氷ナノアイスを用いたマアジの鮮度保持
角田 出髙瀨 清美渋谷 直人櫻井 政文阿部 誠
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2016 年 70 巻 4 号 p. 261-266

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抄録
漁港で入手したマアジを,ナノアイス(NI),海水氷(SI),または,冷蔵庫(R)内に貯蔵し,7日間の鮮度変化を調べた.NI貯蔵はマアジ体表のL値とC値の低下を,SI貯蔵はC値の低下を抑制した.NI貯蔵はSI貯蔵で生じる体表の暗色化やくすみも抑制した.また,SI貯蔵では赤筋のa値(赤色)やC値が大きく低下したが,NI貯蔵はこのような変化を有意に抑制した.普通肉では,NIやSI貯蔵により,K値の上昇が抑えられた.加えて,貯蔵開始から1日後の揮発性塩基窒素量がNIで少なかったほか,7日後の脂質酸化がNIとSIで抑制されていた.鰓付着細菌数では,貯蔵期間の延長につれて増加した.同細菌数では,NIの初期変化はRに比べてわずかに緩やかであったが,貯蔵期間を通して貯蔵方法による差はみられなかった.以上の結果は,ナノアイスの使用が,貯蔵に伴う魚類の外観維持,冷凍・解凍に伴う赤肉の暗化抑制,筋肉内の核酸やタンパク質関連分解酵素や脂質酸化に関係する酵素群の活性抑制等を通して,その品質保持や腐敗抑制に効果のあることを示唆する.
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© 2016 日本海水学会
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