日本海水学会誌
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酸性側pHステップを有するバイポーラー膜電気透析の開発
髙橋 博東 智浩菅原 祐也樫内 悦子
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2016 年 70 巻 5 号 p. 317-323

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抄録

バイポーラー膜を用いる分離プロセスの開発を目的とし,電気透析槽内に酸性側のpHステップを形成する技術の開発を行った.実験装置は6室からなる回分循環型電気透析槽であり,陰イオン交換膜,バイポーラー膜,および3枚の陽イオン交換膜で仕切られている.各室に塩化ナトリウム水溶液を流して装置両端に電圧を印加すると,バイポーラー膜から水素イオンが生成し,その一部が陽イオン交換膜を透過して陰極側の各室に移動した.水素イオンの濃度は,各室の溶液中に存在する陰イオンの濃度とほぼ等しく,結果として酸性側のpH勾配が装置内に形成された.実験結果はNernst-Planckの式に基づくイオン交換膜内のイオンの透過速度,イオン交換膜と溶液間のイオン交換平衡,溶液の電気的中性条件,水素イオンの生成速度,さらには各化学種に関する物質収支を考慮に入れたモデルにより解析を行った.モデルによる解析結果は,電気透析槽内のpHステップの形成結果を良好に説明した.

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© 2016 日本海水学会
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