日本海水学会誌
Online ISSN : 2185-9213
Print ISSN : 0369-4550
ISSN-L : 0369-4550
海水中のスケール成分陰イオンのイオン交換膜透過性 (その1)
イオン交換膜海水濃縮法におけるスケールに関する研究 (第10報)
武本 長昭林 恵子
著者情報
ジャーナル フリー

1973 年 27 巻 2 号 p. 85-89

詳細
抄録
海水濃縮用のイオン交換膜には, 効率の向上とスケール析出防止を目的として, 通常同符号イオン間の選択性を付与する処理 (選択処理) がほどこされているが, 通常の海水濃縮においては, 選択処理による全炭酸 (CO2+HCO3-+CO3-) の膜透過の減少効果は小さい. すなわち選択処理をほどこしていない膜を選択処理する過程では, 硫酸イオンの透過性はしだいに減少するが, 全炭酸の透過性の変化はわずかである. これは通常の海水濃縮の条件では, 全炭酸のほとんどすべてが1価の炭酸水素イオンとして膜を透過するためで, pHを高めて炭酸イオンとして膜透過させる条件とすると, 選択処理の効果が現われる. すなわち選択処理の効果は透過イオンの荷電数によるところが大きいといえる, pH<2の, 硫酸系イオンのかなりの部分が硫酸水素イオンとして存在する条件では, その透過性が増大するので, 海水に酸を添加して濃縮するさいなどには注意を要する.
著者関連情報
© 日本海水学会
次の記事
feedback
Top