1987 年 40 巻 6 号 p. 350-355
イオン交換膜透析装置の海水前処理を目的として, 3社の実用規模の精密濾過膜および限外濾過膜を用いて海水の2次濾過法について検討を行い次のような結果を得た.
1) 3社膜の透過水量はK膜, P膜, S膜それぞれ280, 100, 200l/m2・h・atmであった.
2) 透過水の水質については, 1次濾水に対する粒子数の減少率ではP膜の0.5kg/cm2の68%を除いてはいずれも94%以上, 鉄減少率も粒子数と同様にP膜の28%を除いて46~64%の範囲であった.
3) 透過抵抗の測定では, 膜面に付着物のない場合にはK膜の抵抗が最も小さいが, 膜面に懸濁物が付着すると他2社膜に比べ透過抵抗が大きくなり, 透過水量が減少する傾向を示した.
4) K膜による50日間の連続試験を行った結果, 回復率としてはNo.1, No.2モジュールともに300時間程度までは30%以上であるがしだいに低下し, 最低で18%となり平均で33%程度となった.
5) 膜洗浄方法については, 洗浄効果の高いのは次亜塩素酸ナトリウムあるいは水酸化ナトリウムによる2時間浸漬法で, 透過水量は洗浄前に比べ約2倍に回復した.
6) 3社膜ともに透析用原料海水として十分な水質のものが得られたが, 現時点では大容量の膜がないこと, 薬液洗浄コストが高いことなどから実用化はむずかしいと考えられる.