日本海水学会誌
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食塩溶液による野菜の脱水
大坪 藤代宮川 金二郎
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1990 年 44 巻 5 号 p. 328-333

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抄録

食塩溶液による野菜の脱水について検討するため, 27種の野菜の浸透圧を測定するとともに, 種々な食塩濃度および温度のもとでダイコンの脱水率を測定し, 速度論的に考察した. また走査型電子顕微鏡 (SEM) にて脱水前後のダイコン組織を観察し, 以下の結果を得た.
1) 葉菜17種, 果菜4種および根菜6種のそれぞれの平均浸透圧は4.25, 7.47および9.62atmであり, 葉菜類が低く, ついで果菜類であり, 根菜類は最も高い値を示した.
2) 飽和食塩水によるダイコンの脱水は初期脱水期, 第一平衡期, 減少期および第二平衡期の4段階で進行することが明らかとなった.
3) SEMによるダイコン組織像から, 脱水によりダイコン組織が収縮するとともに細胞間の引き裂かれ現象が見られた.
4) 初期脱水期は見掛け上, 一次反応として取り扱うことができ, その脱水速度定数は10-2(min-1) のオーダーであった. またその速度定数はダイコン試料の表面積に比例した,
5) 脱水反応の活性化エネルギー, E=3.6kcal/molであり, 脱水反応の活性化状態における自由エネルギー変化量ΔF*, エンタルピー変化量ΔH*およびエントロピー変化量ΔS*はそれぞれ21~22kcal/mol, 3.0kcal/molおよび-62~-64e.u. であった. 活性化エネルギーおよび自由エネルギー変化量がかなり小さな値であり, エントロピー変化量が負の値をとることが特徴づけられた.

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