日本海水学会誌
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乾燥塩における難溶性物質の生成
塩の付着母液成分の熱的変化 (第2報)
新野 靖西村 ひとみ有田 正俊
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1993 年 47 巻 2 号 p. 74-80

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抄録

乾燥塩に生成されることがある塩化マグネシウムの熱分解を起因とする難溶性物質の生成過程および防止対策について検討した.
その結果, 塩基性塩化マグネシウム(Mg2(OH)3Cl・4H2O,Mg3(OH)5Cl・4H2O)は,塩化マグネシウムを加熱し, 熱分解により生じたMgOHClが起因となり, 吸湿条件下に蔵置されることにより生成されることを確認した. また, 蔵置期間が長くなると乾燥塩中の塩基性塩化マグネシウムは, 母液中に吸収された炭酸ガスの影響により分解され, 炭酸カルシウムが生成されることを確認した.
これらの難溶性物質が生成されない乾燥塩の品質は, 酸消費量 (pH4.8) で1mg当量/kg以下であり, 乾燥後の塩の酸消費量を管理することにより, 塩基性塩化マグネシウムなどの難溶性物質の生成は防止できると考えられた.
本試験では,上記物質以外に硫酸カルシウムも蔵置期間中に結晶成長した可能性を示しており,難溶性物質の完全な除去が難しいことも示唆している.
本試験で対象となった難溶性物質の発生は,高温多湿となる夏期に,塩の水分の低レベルでの維持(サラサラ性の維持)を目的に,乾燥後の吸湿を考慮し, 乾燥度を上げる (乾燥時の水分を下げる) ために生じる可能性が高い. したがって, この時期の対応としては, 乾燥度を上げずに,乾燥機以降の吸湿防止に注意を傾ける必要があると考える.

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